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広島高等裁判所岡山支部 昭和52年(ラ)9号 決定 1977年5月26日

抗告人

梶田梧樓

主文

原決定を取り消す。

原裁判所の昭和五二年四月八日付公告に基づく別紙物件目録記載の物件に対する競落を許さない。

理由

一本件抗告の趣旨及び理由は別紙申立書(写)記載のとおりである。

二よつて検討するに、競売法二九条一項、民訴法六五八条一号によれば、競売期日の公告には、競売に付する不動産の表示を記載することを要するものであるところ、右の立法趣旨は、これによつて競売の目的である不動産を特定し、その同一性を知らせると同時に、他の公告記載事項と相まち、できる限りその実情を告げて多数の者に競売期日に参加する機会を与え、またこれを信じて競売に参加した者に対し後日不測の損害を生ずることのないようにするためのものと解せられる。したがつて、登記簿上の面積と実測面積とが相違する場合において、多少の相違があるに過ぎない場合は格別、資料上著しく相違していることが認められる場合には、その同一性を認識させるうえからも、また物件の実情を知らせるためにも、これを記載させることを要するものといわなければならない。

しかるところ、本件記録によれば、本件競売公告には物件の表示として登記簿上の「倉敷市児島唐琴三丁目一一一二番、宅地一〇五m2七八、同番地、家屋番号一一一二番、居宅木造瓦葺二階建、床面積一階七〇m2九四、二階三三m2四五」とのみ表示されているところ、鑑定人荘野潔治作成の評価書によれば、右家屋の実測床面積は一階105.61m2、二階約九〇m2であることが認められ、他に右認定を左右するに足る資料はない。

右によれば、右家屋表示の公告記載と実測とは著しく相違するものというべきであるから 右公告中家屋に関する部分は前記法条に違反し不適法なものというべきであり、民訴法六七四条、六七二条四号により、本件競落中家屋に関する部分はこれを許すべきでないところ、右公告によれば、本件競売において右土地、家屋とは一括競売に付せられていることが認められるので、右家屋を除外して土地についてのみ競落を許すときは、右競売条件に牴触するから、結局本件競落はその全部につきこれを許すべきでない。

尤も本件公告には最低競売価額として現況家屋としての評価額三五〇万円が表示され、現実にも梶田均が五五〇万円で競落しているので、抗告人としてはなんら損害を蒙つていないかのごとくであるが、これを本件公告に限つてみれば、旧建物表示のみでは最低競売価額が高額にすぎるとして、競売申出を控えたものも皆無とはいえず、もしも現況に応じた建物表示がなされたとすれば、右競落人より更に多額の競売申出がなされたかも知れないのであるから、右のことから直ちに抗告人にその利益がないということはできないであろう。

三よつて、原決定を取り消し前記公告に基づく本件競落はこれを許さないこととし、主文のとおり決定する。

(加藤宏 喜多村弘雄 篠森眞之)

物件目録<省略>

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